商業施設や作業現場に設置した監視カメラや防犯カメラは、防犯やトラブル発生後の確認に役立つ一方、映像を見続けなければ、館内の混雑や立入禁止エリアへの侵入に気付きにくいことがあります。そこで選択肢になるのが、映像から人物や人の動きを捉えるAIカメラの人検知機能です。
ただし、人検知といってもさまざまな機能があり、目的によって必要な仕組みが異なります。また、映像を見た人が最終確認や現場対応をおこなう運用も欠かせません。
本記事では、AIカメラの人検知とは何かを整理した上で、6つのできることや活用事例、導入時に確認したいポイントを解説します。
AIカメラとは?人検知機能と組み合わせるとどうなる?

AIカメラとは、カメラで撮影した映像をAI(人工知能)で解析・分析できるカメラです。従来のカメラが主に映像を記録する役割を担うのに対し、AIカメラは映像から人物や顔、動きなどの情報を取り出せます。
人検知機能は、その映像の中から人を自動で見つける機能です。人がいるかどうかだけでなく、用途に応じて顔、動作、姿勢、行動、人数などを検知・分析し、通知や数値、確認対象の映像として出力します。
AIカメラと人検知機能を組み合わせると、単に「人が映っている映像」を残すだけでなく、「いつ・どこに・何人いるか」「設定したエリアに人が入ったか」といった情報を取得可能です。
例えば、出入口の映像からは時間帯ごとの来館者数や混雑状況を、立入禁止エリアの映像からは侵入を検知した際の通知を出力できます。
AIカメラと従来カメラの違い
AIカメラと従来カメラの大きな違いは、映像から業務に使える情報を抽出できるかどうかです。
| 比較項目 | 従来カメラ | AIカメラ |
|---|---|---|
| 主な役割 | 映像を記録する | 映像を記録し、AIで解析する |
| 映像の確認 | 人が映像を見て、人物や出来事を探す | 人物・行動・人数などの検知結果をきっかけに確認する |
| 得られる情報 | 映像そのもの | 人物の有無、人数、位置、動き、通知など(機能による) |
| 現場での使い方 | 事後確認が中心 | 混雑把握、侵入通知、動線の把握などの判断材料にする |
従来のカメラでも、人が映像を確認すれば人物や出来事を把握できます。しかし、長時間の録画から必要な場面を探すには時間がかかります。
一方、AIカメラは映像を解析して人物の有無や動きなどを検知結果として出せるため、確認すべき時間帯や場所を絞り込みやすいことが特徴です。
ただし、AIカメラを使えば現場対応まで自動で完結できるわけではありません。通知を受けた後に誰が映像を確認するのか、誰が警備員や施設担当者へ連絡するかといった担当者を決めておく必要があります。
AIカメラの人検知機能でできる6つのこと

AIカメラの人検知機能は、さまざまなシーンで活用できます。ここでは、代表的な6つのできることを整理します。
AIカメラの人検知機能でできること1:顔認識・顔検出・顔認証
AIカメラの人検知機能は、顔認識・顔検出・顔認証に活用できます。
- 顔認識:映像内の顔を検出・分析する機能
- 顔検出:カメラ映像から顔があるか、どこにあるかを見つける機能
- 顔認証:検出した顔とあらかじめ登録した顔情報を照合し、登録済みの人物かどうかを識別する機能
これらは、「人がいること」を把握する人物検知とは目的が異なります。
- 入力:カメラ映像
- 処理:顔の検出や登録情報との照合
- 出力:顔の位置や本人確認の結果
例えば、入退室管理などで「誰かを特定したい」といった場合は顔認証が候補になります。一方、混雑を把握したいだけなら、個人を特定しない人数カウントで足りる場合があります。
顔認証は個人の識別につながるため、利用目的やデータの管理方法、社内の運用ルールを慎重に確認しましょう。
AIカメラの人検知機能でできること2:姿勢検知・離床検知
AIカメラの人検知機能により、姿勢検知や離床検知もおこなえます。
- 姿勢検知:人の関節点や骨格を推定して、姿勢を検知する機能。転倒している可能性がある状態などの把握に使われる。
- 離床検知は、ベッド端に座った状態や、ベッドから立ち上がる・離れる状態を検知する機能
- 入力:見守り対象者を撮影した映像
- 処理:姿勢や動作の検知
- 出力:転倒や離床の可能性を示す通知
医療や介護の現場で活用を検討しやすいものの、通知だけで状態を確定するのは避けるべきといえます。衣服、寝具、カメラの角度、遮蔽物などによっては、見逃しや誤検知が起こる可能性があるため、人間が映像や現場を確認する運用が必要です。
AIカメラの人検知機能でできること3:人数カウント・属性分析
AIカメラの人検知機能は、人数カウントや属性分析にも活用できます。
- 人数カウント:出入口や店舗、施設内の映像から人物を検知し、人数や来館者数、混雑状況をデータ化する機能
- 属性分析:年齢や性別などの傾向を推定する機能
- 入力:出入口・売り場・通路などのカメラ映像
- 処理:人物の検知、人数や属性の推定
- 出力:時間帯別の人数データや混雑状況
例えば商業施設では、スタッフを配置する時間帯を検討したり、混雑が起きやすい場所を把握したりする判断材料になります。
この用途では、個人を特定するのではなく、人数や属性の傾向を把握することが基本です。出入口の向きやカメラの画角、すれ違う人や遮蔽物の有無によって数え方が変わるため、実際の設置場所で確認しましょう。
AIカメラの人検知機能でできること4:行動分析・動線分析・滞留時間分析
AIカメラの人検知機能でできることの中に、行動分析・動線分析・滞留時間分析があります。
- 行動分析:人の動きや行動パターンを分析する
- 動線分析:人がどこを移動したかを分析する
- 滞留時間分析:どの場所にどの程度立ち止まったかを分析する
- 入力:店舗や施設内の映像
- 処理:人物の位置や移動経路、滞在時間の分析
- 出力:動線データや滞留データ
例えば、混雑しやすい通路や立ち止まりが多い案内板周辺、利用されにくい導線を把握できれば、売り場レイアウトや案内表示、スタッフ配置を検討する材料になります。
導入時は、何を「滞留」とみなすか、カメラ間をまたいで追跡する必要があるかなどの条件を決めることが重要です。
AIカメラの人検知機能でできること5:不審者検知・侵入検知
AIカメラの人検知機能は、施設のセキュリティ対策として不審者検知や侵入検知にも活用できます。
- 不審者検知:通常と異なる行動や不審な動きの候補を検知する機能
- 侵入検知:設定した立入禁止エリアや監視対象エリアに人が入ったことを検知する機能
例えば、人の侵入を検知した時点で、警備室や施設管理者へ通知を送り、該当する映像を確認できるようにする運用があります。
- 入力:施設、店舗、倉庫、立入禁止エリアなどの映像
- 処理:人物の検知と対象エリアへの侵入・行動の判定
- 出力:通知や確認対象の映像
常時監視や録画映像を探す負担を減らすきっかけになり、通知を受けた人が映像を確認し、現場対応の要否を判断します。
不審行動の定義は施設ごとに異なるため、「何分以上の滞留を通知するか」「どの線を越えたら侵入とするか」など、現場に合わせた条件設定が欠かせません。
AIカメラの人検知機能でできること6:動体検知
AIカメラの人検知機能では、動体検知もおこなえます。動体検知は、映像内に動きや変化があったことを検知する機能です。人物を見分けるのではなく、画面上で何かが動いたことを捉えます。
- 入力:カメラ映像
- 処理:映像の変化の検知
- 出力:動きがあったことを示す通知や検知結果
例えば、閉館後の搬入口で動きがあった時間帯だけを記録・通知し、担当者がその映像を確認する用途があります。ただし、照明の変化などにも反応する場合があるため、人の侵入を確実に把握したい場合は人物検知や侵入検知を選ぶ必要があるでしょう。
一方、動体検知では、人物が映っていても動かずに止まっていれば検知されない場合があります。人を検知したいのか、動きがあったことを知りたいのかによって、使う機能を選びましょう。
AIカメラの人検知機能を使った業務例4選

AIカメラによる人検知は、人物を見つけるだけにとどまりません。位置や移動方向、人数などの情報と組み合わせることで、安全管理や混雑把握、動線分析といった業務に活用できます。
ここでは、AIカメラの人検知機能を使った業務例を4つ紹介します。
AIカメラの人検知機能を使った事例1:作業車両と作業員の接近を検知する
フォークリフトなどの作業車両が動く現場では、安全対策の規定があっても守られない場合があり、ドライブレコーダー映像を目視で確認する負担も課題になります。
このソリューションでは、定点カメラの映像を入力し、AIが作業員・作業車両・障害物を検出します。カメラ座標を水平座標へ変換した上で、位置関係や接近距離、進行方向から危険の有無を判定し、警報機、PC、スマートフォンなどへ通知する仕組みです。
通知をきっかけに現場の注意喚起をおこなえるほか、危険行動のデータを蓄積して発生傾向を把握し、作業工程の再設計、作業員の再教育、規定の見直しにつなげることも可能です。
AIカメラの人検知機能を使った事例2:危険エリアへの侵入を検知する
アラヤがおこなったデモでは、カメラ映像から車、歩行者、バイク、自転車を認識し、設定した交差点エリアへ侵入した車両以外の対象を表示しています。さらに、交差点に侵入し、車両と接近した車両以外の対象を区別して表示する構成です。
この例では、映像を入力し、AIが対象物の種類とエリアへの侵入を検知します。出力として、侵入対象や車両との接近状況を表示できるため、人の侵入だけでなく、車両との位置関係を組み合わせて危険候補を捉えられます。
実際の現場では、搬入口や関係者以外立入禁止エリア、駐車場の歩車分離エリアなどで、どの対象を検知し、誰に知らせるかを設計する際に役立つでしょう。
AIカメラの人検知機能を使った事例3:人数をカウントして混雑状況を把握する
アラヤでは、人物検知と位置情報の可視化を組み合わせた人流検知のデモをおこないました。狭い通路での人流検知に加え、6m・12m・18mの異なる距離、広場での人流検知を扱っています。
入力は通路や広場を映すカメラ映像で、AIが人物を検知し、人数と位置情報を可視化する仕組みです。出力された人数や位置の情報は、「今どこに人が集まっているか」「時間帯ごとにどの場所が混雑するか」を確認する材料になります。
これらの機能は、イベント時の混雑確認や館内スタッフの配置を検討する際に活用できます。ただし、検知対象までの距離、画角、人が重なり合う状況などにより結果が変わるため、実際の通路・広場に近い条件で検証することが大切です。
AIカメラの人検知機能を使った事例4:人の移動を追跡して動線を分析する
工場のスマート化に向け、作業員とAGV(無人搬送車)の稼働状況を可視化した事例です。複数のカメラ映像から人物を検知し、カメラ間をまたいで人物の動線をトラッキングしています。
人物を検知するだけでなく、作業員とAGVの稼働状態を可視化することで、生産性低下につながるイベントを検知して工場内システムへの連携を目指したものです。
なお、複数カメラでの動線分析を検討する際は、カメラ配置は追跡したい範囲、リアルタイム性、出力を受け取るシステムまで含めて設計する必要があります。
このように、AIカメラの人検知は、目的や現場環境に合わせて検知対象や判定条件、通知方法を設計することが重要です。アラヤでは、安全管理や人流・行動解析などの画像認識AIについて、PoCからシステム導入まで支援しています。
自社の現場で実現できるかを検討したい場合は、こちらのページもご覧ください。

AIカメラの人検知機能を検討する際のポイント

AIカメラによる人検知機能は、導入目的や設置環境によって必要な性能・機能が異なります。導入後の失敗を防ぐために、これから解説するポイントを確認しながら、自社の現場に合ったAIカメラを選びましょう。
目的に合わせた機能を選ぶ
導入前に、何のために人検知を使うのかを明確にしましょう。防犯、人数把握、顧客分析、見守りでは、必要な機能が異なるためです。
例えば、混雑状況を把握したいなら人数カウント、関係者以外の侵入を知りたいなら侵入検知、転倒の可能性を早く確認したいなら姿勢検知が候補です。目的が曖昧なままでは、顔認証が必要なのか、人数カウントで足りるのかを判断できません。
まずは「人を検知した後に、何を判断したいか」を一つ決めてください。例えば、「搬入口に人が入ったら警備室が映像を確認する」「フードコートの人数を30分ごとに把握してスタッフ配置を検討する」のように、入力・判断・対応まで書き出すと機能を選びやすくなります。
検知精度・反応速度・設置環境を確認する
人検知では、誤検知や検知漏れが起こる可能性があります。照明やカメラの角度、対象物までの距離、障害物、人の重なりなどの設置環境は、検知のしやすさに影響します。
もしAIカメラの反応が遅い、誤通知が多い、必要な場面を検知できない場合、現場で使いにくくなるでしょう。そのため、導入前には、実際の設置場所と利用時間帯を想定し、検知したい対象が画角に収まるかの確認が欠かせません。夜間、逆光、イベント開催時の混雑など、通常と異なる条件も評価対象に含めます。
特に安全に関わる用途では、AIの通知を最終判断にせず、通知を受けた人が映像・現場を確認する手順を残すことが重要です。
設定やシステム連携の柔軟性を確認する
施設や店舗によって、検知したい範囲、通知したいタイミング、確認したい情報が異なります。そのため、検知エリア、通知条件、通知先を現場に合わせて設定できるかを確認しましょう。
例えば、次のような要件を事前に整理します。
- 既存カメラの映像を使えるか
- 警備室の画面・PC・スマートフォンのどこに通知するか
- 通知後に映像を見返せるか
- 既存の管理システムと連携できるか
検知結果を通知だけで終わらせず、録画確認や現場連絡、混雑データの集計といった業務フローにつなげられるかが導入判断のポイントです。
個人情報保護と運用・管理の体制を整える
AIカメラは人の映像を扱うため、個人情報保護とプライバシーへの配慮が必要です。特に、顔認証のように個人特定につながる機能を使う場合は、より慎重な運用が求められます。
また、導入前に、利用目的や通知を確認する担当者、現場対応する担当者、設定や映像データを管理する担当者を決める必要があります。運用体制が曖昧だと、通知が放置されたり、確認作業が増えたり、導入効果を評価できなかったりするためです。
そのほか、保存期間やアクセス権限、目的外利用を防ぐルールも整理が必要です。
まずは、次の情報を文書にまとめ、関係者間で確認するとよいでしょう。
- 利用目的
- 通知先
- 確認担当
- 対応手順
- 管理体制
まとめ|AIカメラの人検知機能は目的と運用環境に合わせて導入しよう
- AIカメラは映像をAIで解析し、人の有無、人数、位置、動きなどを情報として取り出せる仕組み
- 人数カウント、動線分析、侵入検知、顔認証などは目的が異なるため、「人を検知した後に何を判断したいか」から機能を選ぶ
- 精度は設置環境に左右されるため、検知条件、通知先、映像確認、個人情報の管理まで含めて、実際の現場で検証することが大切
AIカメラの人検知は、単に人を見つけるための機能ではありません。取得した情報をもとに、現場の安全管理や業務改善、防犯対策にどうつなげるかまで考えることで、導入効果を高められます。
まずは、自社で「人を検知した後に何を判断したいか」を一つ書き出してみましょう。一つの業務に絞ることで、必要なカメラ映像や検知機能、通知後の担当者を具体化しやすくなります。


